博士の愛した数式

読了。面白げなタイトルで前から気になっていたのだけれど、派手な推薦文のオビが気に入らなくて読んでいなかった。読んだら、これが良かった。「ハッカーのたのしみ」と同じ時期に手に取れたのも面白い。やさしい、綺麗な数式が散発する本書。家政婦さんと一緒に考え込んでしまった。

随分前に理容店に行った時に隣のお客がこう話していた。「僕、大怪我をしてから記憶の状態がおかしいんですよ。数分、数十分前のことも完全に忘れる。メモを山ほど用意するのだけれど、記憶出来ていない事が沢山ある。仕事でも怒られるし、長くは続かない」
店員はたいへんですね、なんて言っていた。そりゃあたいへんだろう、なんてオレは思っていた。

循環小数のような博士の記憶は、毎朝自分が書いたメモを発見して涙して、そしてそんなことをも忘れてしまう。悲劇的だ。それでも(だからこそ?)生活は続く。それに愛とか割り切れない無理数とか、そういう話を読んだような気がした。

博士の愛した数式

博士の愛した数式

映画化するらしい。