だれが「本」を殺すのか

kaguyama2004-06-28

出版不況どうしよう、どうなった、の話を読了。
書籍をただのメディアとして扱う意識と、文化の香りを残したい意識とで揺れる出版・流通業界の様子が語られている(と思う)。既得権益と清貧の葛藤というかダラけた甘えというか。まぁ実物はもっと俗でもあるのだよ(現実的であり、ある意味誠実である)と読める。大型書店・小規模書店・古書店ブックオフなどの新古書店など、実物が目の前にあるものなのでなんとなくではあるが感触が伝わってくるというもの。筆者氏は古き良き書店時代を良く知っている人だと思うので、田舎出身のただの小説好きとしては、正直なところ嫌な感触受ける部分もある。それは筆者のスタンスということでだし、そういう時代・地域に触れたかったオレのコンプレックスでもある。富士見書房電撃文庫が家に山積み。

自分的には、ノンフィクションはほとんど読まず基本的に小説読みなので、娯楽メディアのひとつ程度にしか本を考えていないと思われる。だからジャンルも偏る。比較的安価に長時間楽しめるというコストパフォーマンスがあるので依存度が高くなっているわけだ(この点は家庭用ゲームも強力)。

オレがこの本と読んだ感想として出てくるのは、今起こっている出版の減益は結局パイの食い合いの結果だけれど、もっと変わってくるのは本が当たり前でない世代が育ってきた時だろうということだ。書店もしくはその他で本を購入し(図書館で借りるのでもよい)、本を読むという現代の常識が適用されない世代。学校で教科書に触れない、デジタルなネット上でフラットな扱いを受ける時代。この点も著者氏は抜かりないようだ(注:この本の初出は2000年とかのはず。しかも文庫化にあたって後半の加筆がある。2004年前半の話題を扱った超最新ネタだ)。電子「出版」とか、既存の出版をビットに置き換えただけでない、本のエポックが過ぎ去った時、本屋はなにをやっているだろうか。みんなまとめて単なるコンテンツサーバになるようなことって起こるのだろか。そんな未来に誰も責任もてないと思うかもしれないけど、世の中には100年後のために学問する人だっているのだし。